あ
とエロありますので心構え(以下記載)をお願
いします。がっつり真木×兵部です。
18歳未満の方の閲
覧は改めて固くお断りいたします。
こ
こより先は、露骨な性的描写
を含みます。
しかも同性同
士です。ガチ
で男同士です。
腐女子になりきれていない方、BLに抵
抗のある方、原作のイメージを壊したくない方、若さ故のあやまちでここにたどり着いた方、なにを言われているのかわからない方などは閲覧を中止して下さ
い。腐男子の方はご自分で判断して下さい。
いかなる不快や不利益を感じても、当方では関与しません。自己責任でお願いします。
実在の人物や場所、原作・原作者・制作会社・出版社、そのいずれとも一切の関係はありません。ありませんったらありません。
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者等は一切の責任を負いかねます。
全て承知の
上で、全責任を自分で負う気
概のある方のみ、この先へお進みください。
|
時計を見ると朝の9時を少しまわったとこ
ろ。結局、眠れなかった。
「……」
兵部はむっくりと上体を起こす。いつもと違う部屋、いつもと違うベッド、いつもと違う一人きりの朝。
それがよそよそしく感じて、気分が悪い。
だってこの部屋にいる時は、いつも真木がいたから。
だから眠りにつけなかった、その事実もまた気分の悪さを嵩増しする。
多少寝付きが悪くても、別に関係ない。特別なことじゃないから、動じる必要なんてない。そう自分に言い聞かせているうちに、朝を迎えてしまった。
……昨日の夜中、この部屋――真木の寝室に|瞬間移動≪テレポート≫してくると、服も着替えず布団もかけずに真木がベッドに横たわっていた。
そうしたら、兵部の登場にひどく動揺して。近寄るなと言われて理由を問うと、甲板に落ちたというではないか。なら怪我の具合を見せろと言うと、今度はか
たくなに拒否する。その拒絶の理由が知りたくて、大あわてで逃げようとする真木に|接触感応≪サイコメトリ≫して。
あとはカッとなってしまってちゃんとは記憶していないが、真木を部屋から蹴り出したのは覚えている。自分が|瞬間移動≪テレポート≫して部屋へ戻ればよ
かったのに、|超能力≪ちから≫を使うことすら忘れるくらいに逆上するなんて。
葉がただの悪ふざけをエスカレートさせてしまっただけというのもとうに見抜いていて、真木を蹴り出した後に葉のことも――今度こそは|瞬間移動≪テレ
ポート≫で――真夜中の海上に放り出してやった。文句を言ってこないところをみると、葉もまあわかっているのだろう。今もまだ海底に沈んでいるのでなけれ
ば。
なのに心のざわめきは静まってくれない。
「……馬鹿」
真木の相手が誰で、どう思っているか思われているか、なんてことは吹けば飛ぶような些細なことだ。
ショックをうけたのは自分に対してだった。
その手が自分に向けて伸ばされているのが、当たり前だと思っていたから。
想像したこともなかった。
――もし、相手が自分じゃなかったら。
真木はどんな風に抱くのだろう。
口づけは?
囁きは?
抱くのは激しく?それとも優しく?
自分以外の、誰かを。
「最低だな」
口にしてさらにその思いは強くなる。こんなのは下衆の勘ぐりだ。
……真木が誰となにをしようと関係ない。
互いに貞淑であれと誓い合ったわけでもない。
強い衝動というものは止まらないものだし、止めてもいない。自分が生きる上でも、彼らに教育する上でも。
兵部だって、なんとなく今は真木以外を求める気にならないだけで。目の前の存在に情念を感じると、止められなくなるのが男の性だということも知ってい
る。
なのに自分はこんなに女々しい。些細なことなのに、真木の心が動いたわけでもないのに、気が付いたら真木に当たり散らして。
信じきって、頼りきって、変わらないと信じていた――それは甘えだ。
そんな自分の甘えを逆手に取って、裏切られたかのような気になるなんて、驕ってすらいた。最低なのは自分だ。
――あの手で。
「……馬鹿真木」
――どんな風に、抱く?
やりきれなくなって体をベッドに委ねる。
うつぶせで枕に顔を埋めると、真木の匂いがした。
この部屋で目覚めると隣に真木がいて、ひとつしかない枕はいつの間にか自分の頭の下に敷かれていて。
そんな時には気にもならない真木の残り香が、今、あさましい想像とともに兵部の体に入り込み、血とともに巡っている。
「……は、ぁ」
無我夢中で求めることに、そして無条件で与えられることに慣れた体が、信号を点滅させている。それは鼓動と同じ速度で、なのに鼓動を早めていく。
待つ時間は嫌だから、待ってる自分を認めたくないから、全てを忘れて眠りたいのに。
はしたないこととわかっていても、手が勝手に動いてしまう。
「……ん」
やり場のない煩悶を一度処理してしまえば、眠れるかもしれない。
――処理。
色気のない言葉だ。
なのに、これから与えられる処置に期待して、そこは熱さと堅さを増す。
うつ伏せのまま、いつからかベッドに押しつけるようにしていた腰を僅かに浮かせる。片方の手で服を脱ぎながらもう片方の手が兵部自身の高ぶりに直に触
る。
「んっ、……」
嬉しさと不満が半々の快感。
手でするだけではきっと足りないだろうけど、この溜まった性の欲だけは吐き出してしまいたい。少しでも楽になりたい。
「んん、ん……」
息苦しさと、体の下での手の動きの不自由さ。それにこらえられず横を向くと、その僅かな浮き沈みで、シーツに真木の匂いを感じ取る。
「……っ、はぁ、ん」
体を丸めるようにしながら腕の動きを早めていく。けれど。
「ん……」
熱くて、息苦しくて、上り詰める感覚が掴めない。
体の内側へと折られた脚の裏や、シャツの襟にはうっすらと汗さえ浮かんでいるというのに。
熱さに耐えきれず仰向けになると、なりふり構わず服を脱ぐ。布団を剥いで、白いパイル地のタオルケットの一部だけが兵部の足に引っかかっている状態に
なって。
「んっ、ふぁ、ゃ、ん……」
天井へと立てられた両膝の間で、必死に自分自身を慰める。
刺激さえ与えられれば形を変えるそれは、たしかに堅さこそは変わった。けれど。
それ以上の変化を、快感を与えてくれない。
「な、んで……」
――どうして?
何がいつもと違う?
焦燥にかられ瞑った瞼の裏に、浮かんだのは一つの影。
「……ま、ぎ……」
真木はどうしていた?
たしか。
両手で上下動のみで扱っていたそれを、親指を裏側に添えてきつめになぞる。
「ひぁっ…!」
そうして刺激を与えながら、先端の割れ目に指を押しつけると、敏感なそこに痛みに似た悦楽が走る。
「んんっ、あっ、あん……」
染み出る程度でしかなかった透明の液が、明らかにかさを増して流れ落ちる。
先走りのそれを押し戻すかのように、先端に集中して刺激を与えると、ひりついた快感がとろけるような感覚へと変わってくる。
「うン、ふぁ……」
少し、わかってきた。けれど、違う。
もっと――こんな、痛みと紙一重の嗜虐的な快楽ではなく。
慣れた手を思い浮かべる。無骨で、でも暖かい指先も。
先端への責めはそのままに、もう片方の手を太股に引き上げる。するとじきに真木の手の感覚が蘇ってきた。
それをそのままなぞる。内股へ降りて、膝の裏まで撫でると、また同じルートで腰へ、そして上――胸の、薄く色づいた部分とそうでない部分の境界へ、到達
する。
「ふっ、ン」
小さな突起を爪弾くと、腕から腰の付け根にかけて肌が粟立つ。
「んっ、ん、ぁあン、っ」
薄赤いそれを少し乱暴に掴むと、自分の体が上り詰めつつあることを自覚する。
こねるように、やや痛いくらいに摘みながら、もう片方の手で自分自身へも刺激を与えると、もっと上へと体が跳ねる。
「はぁ、ふ、ァん、あ……」
このままいけば、きっと達するだろう。
でも。――達するだけだ。
こんなのは小手先の快感に過ぎない。
「ゃ、――真、木……」
体の中、一番深いところへの熱情的な快感が欲しい。
「……真木、っ……」
甘えでもいい。みっともなくてもいい。真木が誰を抱いていようが構わない。
欲しい。
「あぁん、真木、まぎっ――」
真木が欲しい。
「――はい」
それは当たり前で、でもあり得ない声だった。
「……え?」
聞き慣れたはずの声に現実に引き戻され、恍惚の半ばで声の出所を伺うと、暗闇の中、ベッドより奥、デスクより手前に、この部屋の主が立っていた。
黒いスーツ。ダークブラウンのシャツ。黒のネクタイ。少しはねた黒い長髪。蹴り出す時に兵部自らが投げつけた革靴も。どこをとっても間違いない、真木
だ。
何故、などと言うのは無駄だろう。だって彼の部屋なのだ。
それがわかっていたから、自分を慰めるのにこの場所を選んだのだから。
「……真木、?どうして――」
幻でも夢でもない。実物で、現実だ。
唐突に、今の自分が何をして、どんな姿でいるのかを理解する。
「――やだ、見るなっ!」
「止めないでください」
「やぁっ……!」
口は拒むのに、躯を閉じることはできない。
ベッドに傾けるように上体を預けてきた真木に、容易く膝を開いて。
片腕で足をさらに開かれると、期待に起ちあがっているものがかすかに震えているのが見える。
「こんなになって、もう止めることのできるあなたではないでしょう?」
足を開いていた左手で、兵部自身の手を捕まれると、それを熱の塊へと再度添えさせる。
「続きを、してください。俺に見せて下さい」
「えっ……」
驚いた声を上げたのは、しかし一瞬のことで。
次の瞬間には、また自分への愛撫を再開していた。指摘されずともそうしていたかのように、当たり前に。
「…ん……ふ、ぁ」
でもさっきまでとは違う。
真木がいる。目の前に。
見せろと言われたから、見せつけるためにこうしている。
一方通行じゃない自淫。それだけで滾る。
「あ、あっ、ん……」
両手で快楽を与える。服を着たまま慰めていた時のような体を包む暑苦しい熱ではなく、体の奥から来る豊かな質量を持った熱さが、真木に見られている部分
に集まってゆく。
「っ、ああっ、ん、真木……」
快感に反応して時々止まってしまう手の動きや、胸の尖りが固くなってゆくことも、呼吸が上がって胸が大きく上下することも、時に悦楽が過ぎて喉を仰け反
らせてしまうことも。
「……んんっ……」
全て真木に見られている。
視線で犯されている。
そのことにたまらなく興奮して、首を振って髪を揺らす兵部の手に、真木の手が添えられて――
「んっ、ああっ!っん!」
自分でも呆気ない程に、兵部は達していた。
真木の視姦と指先のせいで。
「……あ……あぁ……」
どくどくと吐き出されるものは途中から真木の掌で受け止められている。
自身の内股が、ひきつれるような感覚とともに雄の脈動にあわせて痙攣している。そのさまを、半ば呆然と見る。
こんな簡単に、いってしまうなんて。
「よく、見えました」
子供を褒めるときのような声。よくできましたね、と同じニュアンス。
「見せて、やったんだよ、馬鹿……真木」
「俺の名前を呼びながら、ですか?」
「……いつから見てたの」
体を起こして真木の肩を抱こうとして。
「っ」
ピク、と真木が身じろぎする。思わず兵部の手も止まる。
その体の両膝はベッドの上に荷重をかけ、兵部の脚の間に挟まっている。が、本人は緊張した面持ちで顎を少し引くと。
「……いいんですか?」
「なにが?」
「貴方とキスしたいと、俺は思ってもいいんでしょうか」
「駄目だね」
同じベッドの上に二人、とても近い位置にいるのに、白い裸体を晒している兵部と暗い色彩のスーツを着こんだままの真木。
その明暗がそのまま心の距離になったようで、真木は少しうつむいてしまう。
「……はい」
消沈した真木の暗い顔に、兵部はさらに顔を寄せて言い放つ。
「僕以外とはキスしたくない、って思ってるんじゃなければ、譲れない」
話す、というより囁きに近い声で真木の顔と自分の顔を近づけた。
「少、佐」
「どうなの?」
改めて近くで見ると、いつもより少し憔悴しているふうだ。真木のことだ、部屋を追い出されてから、きっと眠れてなどいないだろう。
なのにその瞳は熱を孕んでいる。
真木が心の底から自分を欲している時の瞳だ。
「あなた、だけに、キスしたい……です」
そして今頃は自分にも戻っているだろう。真木を欲する瞳が。
「なら、許してあげる」
本当はそれに怒っていたわけじゃないのに、恩着せがましく言いながらキスを与え――ようとしたのに、真木が獲物をとらえる獣の勢いで、兵部の唇を奪いに
来る。
「んっ……」
有無を言わさず、熱く濡れた舌が兵部の口腔内に入り込む。舌を吸われたかと思えば唇をゆるく噛まれ、また舌をからめ取って。いつものように頭を引き寄せ
るでも顎を掴むでもない、緩やかで束縛のない距離なのに、それを必死で詰めようとするかのように真木の舌が食らいついて離れない。
「……ふ、ぁ…っ」
接吻の合間に時折漏れる兵部の声。
それが許しの合図なのだと、真木が思ってくれればそれでいい。
「ところで、どうやって部屋に戻ってきたのさ?」
性格的には下層階のランドリーで毛布にくるまって泣き寝入りしていそうな真木が、日の高いうちから戻ってくるというのは少し不可解だったので、長いキス
の後に兵部は聞いてみる。
「その、紅葉に、少佐が自分の部屋に帰らないのは、俺を待っているからだと……|瞬間移動≪テレポート≫させられて……」
だから、戸を開ける気配も足音もしなかったのか。
納得している兵部に、真木が珍しく含み笑いをしたかと思うと。
「だから、あんな声で呼ばれていたとは、思ってもみなかったです」
「〜〜っっ!!」
それは”あんな所に立っているとは思ってもみなかった”からだ。
羞恥に真木から身を離す。と。
「でも」
そう言いながら真木が重心を後ろに戻す。
二人の体の距離が互いに少しずつ開いてしまったことに少し肌寒さのようなものを感じていた時。兵部の体に今までにないぬめついた感覚が走る。
「本当はここが、一番好きなんですよね」
濡れた感覚の源泉は、兵部の体の一番奥、窄まったところだ。
さっき放ったものを真木は手のひらで受け取っていた、その白濁液をまとった指で触られたのだ。
そう理解した直後に。
「あ、ぁ!」
滑りを纏った真木の指が窄まりへと入り込んでくる。
「ん、ンっ…」
ほんの僅か、最初の関節を過ぎたあたりで引っ掻くように動く。
「んんっ、ふぁ…」
指は自在で、でも少し物足りないから、知らず乞うような鳴き声になる。
「そうでしょう?」
言葉で煽りながら、更に入り込んでくる。胎内へ。
「っ、あ、あン、ん」
少し入り込んでは、塗りつけるように隙間なく内側を撫でて、そしてまた少しだけ奥に入ってくる。
「ああ、んっ」
「感じてますか?」
聞くと、唐突に指の動きを止める。
「ゃ、あ……っ、感じてる、からっ…」
だから続けて。声のない懇願を聞き入れて、真木は一気に奥まで指を入り込ませた。
「あああン、んっ、ぁあ……」
まだ足りてはいないけれど、真木の指から今日はどこまで侵入するつもりなのかを推し図って、淫らな体が安心する。
「いいですか?」
「…ん、イイ。…きもち、い、い」
「本当に、いいですか――俺で」
「――ぅ、ん。いいよ、真木――」
言葉の裏に顰められた真木の煩悶、その答えになっただろうか?
こんなふうによがるのは真木の指だからこそなのだと。
「だから、もっと、掻き回して……お願、い」
投げ出されたままだった足を真木の体に絡みつける。
「――少佐」
一瞬息を呑んだ真木が、指の数を二本に増やす。
「あ、ん、ぁあ…ぁぁ……」
そのまま滅茶苦茶に抜き差ししては、指を折り曲げたり、掻き出すように動かされて。
一度絶頂を迎えたからなのか、悦楽のレベルは高くに維持しながら、どこを抉られても同じように快感を感じる。
「んっ、あん、ああァ、んっ、ン、真木っ…ん」
指の動きに専念するかのように足下に座り込んだままの真木に熱い目線を送ると、臆病で探るような表情を見せながらも、兵部の中に入り込む指が3本に増え
る。
「ああっ、んん、っ」
少しずつ声が大きくなっている自分をどこか遠くに見ながら、シーツにしがみつく。
「っ、ああ…ア、んぁ……ア」
シーツを掴む両手をきつく握ると、真木の指の圧迫感が増える。
「っ!」
少しひるむ真木。真木が何かをしたのではなく、自分の体が勝手に締め付けたのだと気付く頃には。
「アぁ、んああぁん!」
自分でも止められない性の発露が訪れて、すぐに絶頂へと至っていた。
「……あ……」
一人ではここまで高ぶらなかったことが嘘のように、今日二度目の射精を終えて、体にこめられていた力が抜ける。
「……真木、ごめ、ん…」
見ると唐突な絶頂についていけなかったのだろう、屈み込むような姿勢の真木、その左手は変わらず兵部の中で、身につけたシャツと、そして目の下から首に
かけて白い飛沫が散っている。
右手で防がなかったのだろうか。そう思うと右手の甲でゆっくりと頬の精液を拭うと、まじまじと見つめてから、おもむろに舌で舐める。
「っ、まっ、真木っ」
その顔に白い液が飛び散っているだけでも卑猥なのに、さらにそんなことをされると、さすがの兵部も怯む。――羞恥に。
「どうかしましたか?」
「やっ、そんなの……舐め、ないで」
「でも、陶酔してますよ」
「ちがっ、う」
陶酔して見えるのはまだ体内にある真木の指のせいだ。それが与える刺激が今も自分を責め続けているから。
「だってこんなに、痛いだけ指を締め付けてきてるのに」
「っ!」
「あなたは感じてる。そうでしょう?」
右手で腹の辺りを探る真木の手から粘液質のものが兵部の体に降りてくる。否、真木が塗りつけている。
「やだっ、そんなのっ」
それは吐露された欲望だ。どちらかというと汚らわしいものなのに。
「そんなことありませんよ」
兵部の心を読んだように断言すると、兵部の肌に顔を近づけて、熱い舌で掬っては絡め取る。
「んんっ」
左手はまだ兵部の中にあって、時折思い出したように左右に円を描いて掻き回したり、ゆるく出し入れしたりと器用に動かされている。
けれど今は、兵部が思惑に反して出してしまったものを、体に塗りつけられて、舌で舐め清められて。何故かひどく――火照る。
「あ、あ…あぁ、ん、ふ、っ…」
そうして舌が臍に達すると、最後の窪みを責める。今の姿勢では真木の舌が届く精一杯の場所だ。
「真木、も、う……」
「もう、何ですか?」
「――ちょうだい、お願…い」
「そんなに欲しいですか?」
二度目の絶頂の後は、ほんの少し揺さぶったられただけだというのに。
「……ぅ、ん」
それでも、欲しくてたまらなくなっていた。
兵部の欲求に応じるために、真木の指の動きが止まり、圧迫していたものが抜けてゆく。
「……あ、ぁ……」
そうして真木に体を離されると、期待と不安で身を裂かれそうな幻想に襲われる。
皺の寄った服を脱ぐ真木の動作。それがいつもよりやけに緩慢に思えて、ジレンマは更につのる。
そしてようやく服を脱いでベッドへと足をかけた真木に抱きつこうとした時。
「つっ、少佐、っ」
真木の顔が険しくなる。というより、苦痛に歪んでいる。
――そういえば真木は怪我をしていたのではなかったか。
「真木、肩……」
右腕をかばっている。服を脱いだり、肌を触ったりする程度では大丈夫なようだが、加重をかけたり曲げたりするのは辛そうだ。|接触感応≪サイコメトリ≫
した時、骨に異常がないのは確認しているけれど。
「ええ」
そもそも、これが原因で真木は部屋を追い出されたのだ。真木の表情も自然と苦笑いになる。
「協力してもらえますか」
「うん、でも」
どうやって?と問おうとすると、兵部の足にわずかに絡まったタオルケットを、真木が床に敷く。ベッドからは距離を置かずに。
「ここに、座ってください。……そう、体はベッドに、膝は立てたままで」
左腕で誘われた姿勢は、上半身をベッドに預けて、膝は床の上だ。
これではまるで獣のようで、ちょっと――恥ずかしい。そう言おうと思うけれど、協力すると言った手前引き下がれない。
チュプ、と音を立てて、また真木の指が兵部の秘部をまさぐっている。
「ふぁ、ん」
ついさっきまでくわえ込んでいたものの懐かしい感覚に痺れが走る。
「もう、大丈夫みたいですね」
探るために動かされていた指を離されると、真木が後ろから片腕で抱きしめてくる。
あいかわらず動くのは左手だけのようだ。
「こんなのが好き、って、ちょっとエロくない?」
抱きしめられる感覚に安堵を感じながらも、どこか恥ずかしくて茶化さずにいられない。
「好きじゃないとは言いませんが、少しその、つまらないです」
「つまらない?」
「……あなたの顔が見られないから」
やたらと耳の近くで言われたかと思うと、ぬるく湿ったものに耳たぶを撫でられる。耳の後ろをなぞられて、それが真木の舌だと知る。
「ふぁ、っ」
「でも今日は感度がいいですね」
「そんなことないっ…!っん、……っ!」
言いながらも、舌が耳の中に入ってくる感触と濡れた音に煽られて、吐息が言葉より雄弁に快楽を語る。
「感じますか?」
「なんで、聞くんだよっ」
察しろよ。真木の馬鹿。
「朴念仁なんで、言われないと分からないんです」
自分で言ってるんじゃないよ。真木の馬鹿馬鹿!
「そもそも――」
息が荒い。でももっと荒く、熱くなりたい。
「――君が欲しくて僕は、ゆうべ、ここに来たのに」
横暴と知りつつ真木を|接触感応能力≪サイコメトリ≫して。そして動揺している自分の弱さと一緒に、真木を叩き出して。
真木が憎かったのではない。弱い自分が顔をあげてきたから、追い出した。
「戻るの、遅いんだよ、君は」
でも本当はずっと待っていた。
しょぼくれた顔で部屋に入ってきて、項垂れて、上手くもない言い訳を聞かされる――そんな風に、『次』がやってくるのを待っていた。
「申し訳ありませんでした。待っていて……くれてる、とは思わなかったので」
「待ってたんだから」
言ってしまってから、恥ずかしさを感じる。
「――はい」
自分とは逆に、真木の声は嬉しそうで。
「わかってる?」
羞恥をごまかすために、早口で、命令口調で言ったのに。
「ええ」
腰に廻された片腕で、真木に強く抱き直されて。
「よく、わかりました」
耳の裏に顔を寄せられると、吐息が少しだけくすぐったい。
「待たせてすみませんでした」
ああ、僕は結局こうやって、真木を許してしまう。
その時だった。
唐突に。急に、熱くて威圧的なものが兵部に入ってくる。
「ん――あああぁっ、ああんっ!」
凶暴なまでの存在感は猛った真木の雄だ。
何の|事前接触≪アプローチ≫もなしに唐突にねじ込まれて、体が大きく仰け反る。
なのに真木はそんなこと関係ないとばかりに、逃げようとする兵部の腰をしっかりと支えると、侵入させるそのペースを落とす気配すらない。
「っ、んんっあ、ぁああああん、っあっ――」
圧倒的な。ひたすら圧倒的な責め苦に、声は苦悶を奏でるが、その中にすら甘いものが漂う。
「好きでしょう?こういうのも、たまには」
「んっ、んあン!」
生理的な涙がにじんで、視界がぼやけてくる。もうずっと前から、快楽に浮かされてどっちが前後でどっちが上下かもわからなくなっていたところを、その声
に急に覚醒させられて弱音が出る。
「真木、無理、っ、キツいっ……」
「ここは、そうは言ってませんよ」
腰を支えていた腕を抱きかかえるように伸ばすと、兵部の屹立に触れてくる。
「んっ」
たしかにそこは兵部自身の想像以上にいきり立っていて、見つかりたくないものを見つけられてしまった気持ちになる。
「素直な体をしています。普段から、そんな風に正直でもいいのに」
傲慢な言葉なのに、その声はビロードのように艶めいて甘く。その前に兵部は屈服する。
「あ、ん……いい、っ……んあん」
気付いたらもっと早く、もっと深くと求めていた。
「だから、思う存分イッてください」
そう、思う存分、貫かれたい。
「んん、ぁ、もっと、真木、もっと――」
体に正直に、欲するままに。
そう、思ったのに。真木が深くへと進むことを止めて、ゆっくりとした動きにスイッチする。
「…真木?」
自分でも不満そうな声だと思う。
「――顔を見たら言えそうにないので、今、答えを聞かせてください」
「ん…?真、木?」
左手だけを肩に廻して背中から抱きしめられると、すがりつかれているような錯覚に陥る。
「貴方にとって俺は、何ですか」
――聞かれるまでもない。大事な子供で、有能な部下で、そして。
他の誰も与えてくれない快感を与えてくれる存在、だ。
それは肉体だけでも精神だけでもなくて。
なのに、言葉にできない。
「何、って……」
緩やかにだけれど、互いの体は今も快感を追い続けて、揺れ動いている。
かすかな、けれど無視できない性欲が、思考する力を半減させているとはいえ。
――わからない。言葉にしようとすればその都度逃げてしまう。
「では、葉とのことを知って、どう思いましたか」
それは、嫉妬とか、ねたみとか、独占欲とかそういうことだろうか。
「そんなの、君の勝手だ……って、思ってた、けど」
動揺した。
本当はずっと戻ってきて欲しかった。
自分だけだ、と言われたかった。
「けど?」
自分以外許さないと言っていいのだろうか。
「……お願い……真木」
信じたくない、頼りたくない、甘えたくないのに。
何故自分は、すがるように真木の腕に自分のそれを絡め、握っているのか。
「今だけ」
いつかの一瞬、真木が誰と寝ようが構わないと思った。その時は本気で思ったのだ。
「信じさせて」
でも、|嫌だ≪・・≫。
「今だけ、僕のすべてが、君のものだって……思わせて」
嘘でいいから。嘘だからこそ。
天使のように、子猫のように、貪欲にいさせて。
「……ええ。あなたは俺のものですよ。――京介」
真木がまだ子供だった頃の呼び方で呼ばれて。その瞬間の、心の根元を揺さぶられるような喜びを、なんと言うのか兵部は知らない。少なくとも、今まで同じ
喜びを得たことはない。
誰かのものになる、それは精神の奴隷だ。
まっぴらだ、と思う。まして色恋沙汰くらいでそんなやりとりをするような、そんな下世話な人間になどなるものか、とすら思っている。
だからこんな言葉は本来不本意で、あり得ない。そのはずなのに。
「君が僕を甘やかすから、僕はこんなに、弱くなってしまう」
今だけ。そう思うのに。
その今だけ、がずっと続いたらいい、なんて。
「だったらもっと、俺に溺れてください。|戻れなくなるところ≪ポイント・オブ・ノー・リターン≫まで。」
誘惑のままに真木に溺れ続けたい。
誰か一人だけを盲信するという思考停止の状態を続けていたい。
「――でもそれは……ありえないんだ、……真木」
ふいに口から言葉が滑り落ちる。
甘えのないそれは自分の声なのに、自分ではない誰かが乗り移ったかのようだった。冷静で、酷薄なもう一人の自分。
「……はい」
――わかっています。
あまりにかそけき声に真木の瞳を見ようとするけれど、そのまま律動を与えられる。
「んっ、あっ、んァ――あ…ん」
己の口から漏れる声は嘘のように一変する。会話でとどめられていた行為が再開されたことに、悦びを訴えるものへと。
「わかってます、俺の、兵部――少佐」
告げると共に、真木の残り、その全てが一度に兵部の中に押し込まれる。
「んぁああああァア!ああん、ぁ、ぁ――!」
――ただ心の求めるままに――哭いて。
「あなたは、……俺のものですから」
今は溺れよう、体の奥から、そして唇から、その掌から与えられる快感に。
今の真木の言うことは、半分は当たっている。
もう半分の間違いは、|戻ることのできるところ≪Point of no return≫など、もうとうに過ぎ去ってしまっているということ。
けれど戻れる過去など存在しないし、戻る道なんて必要はないから。
だから――今だけは。
日は傾きかけ、ひめやかで優しい倦怠が部屋を取り巻いている。
意識が飛ぶまで抉られ続けて、真木のものとして嬲られて。気が付いたら真木に風呂に入れられていた。行為の跡を拭う真木の手を取ると、そのままもつれ
あって。その時初めて、真木が今日は遮二無二な突き上げしかしてこないのは右肩の怪我が原因だったということに思い当たった。出来る限りの治療はしたけれ
ど。そしたら、治したら治したで手での愛撫が増えて、またそれを体が悦ぶから、結局また最後までしてしまって。
おかげで軽く、ではなく完全に湯当たりしてベッドの上に横たわる兵部とは裏腹に、真木はすでに服を着込んでいる。スーツの下と、ワイシャツ。今はまだネ
クタイもつけておらず、シャツのボタンも上から二つめまでが開けられている。顎の下とシャツに覆われた肌色の逆三角形の内側に赤く浮かぶキスマーク。浴室
での行為を敬遠しようとする真木をその気にさせるために、兵部がしかけた時のものだ。
長くても1週間以内には消えるはかない痣。
その痣が消えた後で、果たして真木は自分以外と寝ることがあるのだろうか、と考える。
ありえない話ではない。バレンタインの季節に、ひそかにチョコレートをもらっていそうな人間とかなんとか言われていたし、その成果も知っている。真木本
人はリベートととらえて優遇すればいいのだろうか、などと悩んでいたようだけれど。
自分でも言っていたけれど、色恋に関しては本当に朴念仁だから。
相手がかなり積極的でないとありえないだろう。例えば、そう、『彼』のような――。
「葉のキスはどうだった?僕とするのとどう違った?」
――きた。
真木は知らず体を強ばらせる。
答えようのない問い。答えたら必ず激怒するとわかりきった質問。
そうわかっている。これは罰なのだ。
どう言っても自分は懲らしめられる。
真木は再度部屋を蹴り出される覚悟を決めて、せめて冷静に、事実だけを告げようと決心して――
「……上手でした」
――結局、カタストロフィ号の船外に続く大海原、その水深十数メートルの地点まで潜らされたのである。
<終>
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